子どもの発達障がい

特徴・原因・対策を解説

思春期向け 発達障がい解説ページ

中高生のみなさん向けの発達障がい解説ページです。

発達障がいとは?

環境とのミスマッチから学びや生活に困難が生じる、生まれつきの脳機能の障害です。

 

脳内でおきている情報処理の仕方が多くの人とちがっているのが特徴といえます。

 

●環境のミスマッチとは?…『社会モデル』という考え方

 

「困ったときには障がいのある人が自分で解決するべき」

という考え方を『個人モデル』と呼び

 

「社会が『障壁しょうへき』をつくっているから困っている人がいるのだ!だから社会全体でそれを解消していこう」

という考え方を『社会モデル』と呼びます。

●発達障がいは『個性』か?『障がい』か?

例えば発達障がいの方の中には字を書くことが苦手なタイプの人がいます。でも、授業中やテストのときにタイピングを使うことができたら、その人の特性は『障がい』ではなく学び方の『個性』と呼ぶことができるでしょう。

 

ですが、残念ながら社会にはまだまだ少数派の『個性』に対する無理解の壁がそこかしこにあり、自分の力ではどうすることもできない特性が原因で、困ったり辛い思いをしている人がたくさんいます。

 

特性を『障がい』と表現すると、その人がもつ困り感やしんどさに気づいてもらえる可能性が高くなります。逆に言えば、特性を『個性』と呼ぶことによって「人それぞれだよね」と片付けられてしまい、配慮を受けづらくなるリスクが生じるでしょう。

 

診断自体は日本ではお医者さんしかできません。ですが、診断名があったとしても日常生活の中で発揮される特性を『個性』ととらえるのか、『障がい』ととらえるのかはその人自身に決める権利があります。

 

あなたにとって、その特性がプラスに働く環境にいられるのであれば、愛をこめて『個性』と呼びましょう。もし、マイナスに働く環境にいるのであれば『障がい』と表現してその困り感を周りの人に伝えましょう。そうすると、周囲の人に理解してもらうための手助けとなるでしょう。

 

ただし、自分のすべての特性が常に・最大限に発揮される環境というのはなかなかありません。あなたにとって力を発揮しにくい環境が、誰かにとっては最高の環境だという場合もあります。

 

自分自身が積極的に参加したいと思える場所を探し、そこで関わる人達と一緒に努力しながら環境の向上を目指し、どうしてもフィットしない部分はどうしていけばよいか、周囲に相談しながら解決方法を探していきましょう。

 

社会の障壁は、社会で解決する必要があります。そして、あなたも社会の一員です。環境は「誰かが良くしてくれるもの」ではなく、「みんなで良くしていくもの」であると考えられるとよいでしょう。

発達障がいの種類と特徴

「発達障がい」は、いくつかタイプに分類することができます。

 

  • ASD(自閉症スペクトラム、アスペルガー症候群、広汎性発達障がい)
  • ADHD(注意欠如多動性障がい)
  • LD (学習障がい)/ SLD(限局性学習症)

ASD(自閉症スペクトラム、アスペルガー症候群、広汎性発達障がい )

自閉症スペクトラム症の特徴として、「コミュニケーション」と「想像・行動」の特異性があげられます。

コミュニケーション」の特異性 

『インプット』と『アウトプット』のふたつにわけてみていきましょう。

 

まず、『インプット』について。ASDの方の中には、以下のようなタイプがいます。

 

■ 目に入るたくさんの情報をそのままとらえる分、どこが大事なポイントなのかを取捨選択することが苦手

 

あるいは

 

■ ある一点について集中して真剣に注目できる分、他のことが視界にはいりにくくなる

 

また、視覚化、数字化されているようなはっきりとした情報をと理解することが得意な反面、表情やジェスチャーから発される感情などの非言語の情報を読み取ることが苦手な方もいます。

 

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次に、『アウトプット』について。こちらも以下のようなタイプがいます。

 

■ 消極タイプ:寡黙・大人しい・他者への興味関心は低い・ひとりで過ごすことを好む

 

あるいは

 

■ 積極タイプ:多弁・おしゃべり好き・距離感が近い・大勢で過ごすことを好む

 

『インプット』と『アウトプット』 いずれも、”塩梅”の見極めが大多数の人の感覚とは異なるのだと考えていただけるとわかりやすいでしょう。

 

★「想像・行動」の特異性 

同じこと、繰り返されることに心地よさを感じます。この特性をもつ方は、ルーティンが大好き、規律やルールを絶対に守る、常同的または反復的な活動に安心感を覚えたりします。

 

また、感覚刺激のとらえ方が特異的で、五感をはじめとする感覚が過敏だったり鈍感だったりする人もいます。

ADHD(注意欠如多動性障がい)

ADHDの特徴として、「不注意」と「多動性/衝動性」があげられます。

 

★不注意 

 

 

マイペースなおっとりタイプです。おおらかで人を安心させる素質があります。

 

日常生活では、整理整頓やスケジューリングなど…集中力やモノ、時間などを『管理』することに苦手さを覚える人が多いようです。

★多動性/衝動性

エネルギーいっぱい!猪突猛進タイプです。元気がよく積極性に溢れています。

 

 

ずっと座っていることや、順番待ちが苦手なので学校などのルールの多い集団生活の中では苦労することがあります。

LD (学習障がい)/ SLD(限局性学習症)

LDの特徴として、学び方の特異性があげられます。

 

「日常生活はスムーズに送れているのに、なぜか勉強だけはどんなに頑張っても難しい…」という方はLDの可能性があります。

★「読み」の苦手さ 

・読むことがすごくゆっくり

・スムーズに読めない

・読んで理解することが大変

 

 

★「書き」の苦手さ 

・書き間違いが多い

・文法を間違える

・英単語の綴りが覚えられない

 

 

★「計算」の苦手さ 

・数字の大小がわからない

・暗算が大の苦手で計算に時間がかかる

・分数などの概念の理解が難しい

発達障がいの原因

発達障がいの原因については「遺伝子的要因」と「環境的要因」の二つが関係しているということがわかってきています。

親のしつけや子育て、個人の努力不足が原因ではありません。

 

 

★「遺伝子的要因」ってなに? 

遺伝子とは、親から子に受け継がれる「人間の体をつくる設計図」のことです。

発達障害にはこの遺伝子が深く関わっているといわれていますが、詳細は未だ分かっていません。

なお、同じ遺伝子情報をもつ一卵性双生児でも片方が発達障害と診断されてももう片方は診断されないというケースもあり、単純に遺伝的原因だけでは説明できないことは判明しています。

 

 

 

★「環境的要因」ってなに?

ここでの「環境」とは、食事や運動、汚染物質、ストレスなど…母体のお腹の中にいたときに、外から受けた刺激のことを指します。では、どんな「環境」が発達障がいの原因となるのか?これもたくさん候補がありますが、はっきりとはわかっていません。

 

まとめると、発達障がいの原因は「遺伝子と環境が関係しているが、具体的にはまだまだ謎に包まれている部分がある」ということになります。

発達障がいの対策

発達障がいの特性から何か困難にぶつかったときできる対策を、大きく分けて3つに分けてご紹介します。

 

●例えば…じっと座っていることが苦手な子の場合

  • 「合理的配慮」こまめに休憩をとったり、体を動かす機会を設ける
  • 「トレーニング」さまざまな工夫をしながら、着席時間を少しずつ伸ばしていけるよう練習する
  • 「服薬療法」多動/衝動性を抑えるためのお薬を飲む

 

どの対策がベストか?は状況によって異なり、どれかひとつ選ぶのではなく掛け合わせていく場合が多いです。

可能性を伸ばし、困り感を和らげるにはどうすればいいか?専門家と相談しながら選んでいきましょう。

 

 

 

★環境をマッチさせるための工夫「合理的配慮」の申請

視力の弱い人がメガネを掛けるように、車椅子の人がスロープを使うように、特性が「障害」とならないように環境の方を変えることを「合理的配慮」と呼びます。

 

発達障がいの人が受ける合理的配慮の代表例としては、授業時のパソコン・タブレット端末の使用や、集団を避けた個室での対応などが挙げられます。

 

合理的配慮を受けるには、環境を管理している人(例えば学校の先生や自治体の人)に申請をする必要があります。

 

 

 

★”暮らしやすさ”につながる様々なトレーニング

 

発達障がいは「発達しない障がい」ではなく、他の人と違う形やスピードで発達していく障がいです。

そのため、特性に合わせたトレーニングをすることで得意を伸ばしたり、苦手を和らげられる可能性があります。

 

 

 

★症状を緩和させるためのお薬

 

ADHDの不注意、多動、衝動性などの症状緩和のためにお薬を処方してもらうこともできます。

 

その他にも、不安や緊張が強くなったときや、夜うまく眠れない時、気分が沈んでしまったときにも効果のあるお薬があります。

 

お薬はお医者さんの指導の下、用法容量を守って正しく使っていく必要があります。

監修 : 宮尾 益知 (医学博士)

東京生まれ。徳島大学医学部卒業、東京大学医学部小児科、自治医科大学小児科学教室、ハーバード大学神経科、国立成育医療研究センターこころの診療部発達心理科などを経て、2014年にどんぐり発達クリニックリンク を開院。